Olivero & Robutti (2007)

Olivero, F. & Robutti, O. (2007). Measuring in dynamic geometry environments as a tool for conjecturing and proving. International Journal of Computers for Mathematical Learning, 12, 135-156.

この論文は,Cabri などの動的作図ツール (DGS) における測定ツールがどのように利用されうるか分析したものです.特に,推測と証明におけるものを扱っています.なかなか面白いです.

論文では,まず測定の様式を規定します.ラボルドが昔から言っている,spacio-graphic と theoretical な世界(本論文では field の語が使われている)の間を,どっちの方向に移動させる測定であるかにより様式を二分します.そしてそれぞれの測定において,幾何の問題を DGS を用いて扱う際の測定の役割に応じてさらに細分し,合計で5つの様式を規定しています.データの分析では,これらの様式が実際に学習者による DGS の利用にいかに見られるか示しています.分析は若干大雑把な感じはしますが,まあ中心は理論的なものなので構わないのでしょう.

最初に思ったことは,これらの様式は DGS に特有のものですが,紙と鉛筆の学習環境においても似たもの(おそらく数が少ないかもしれないが)が考えられるのでは,ということです.この論文では,DGS の場合だけで,他の環境における測定に関する参考文献があまり出ていません.Chazan (1993) ぐらいです.あまりやられていない研究なのでしょうか?そんなことはない気がしますが.まあ具体的に何かを分析して確かめてみると面白いでしょう.

もうひとつ思ったことは,ラボルドの枠組みに関してです.この論文で用いられている spacio-graphic と theoretical な世界間の行き来は,昔から知っていましたが,改めて非常にシンプルで便利だと思いました.semiotic register とはまた異なった次元のものを,特に cognitive な視点から示してくれる感じがします.私も一度何かに使ってみようかと思います.ところで,この枠組みの仏語での参考文献は,有名な論文の Laborde & Capponi (1994) ですが,この論文を見ると英語でも色々出ているようです.Laborde (2004) に沢山出ているみたいです.これはまだ読んでいませんが,読んでみたいですね.本なので web でダウンロードできないのが面倒ですが・・・.

あと,この論文は,イタリア研究グループによるものです.以前の研究では,同様のことをドラッグ機能の場合で分析したそうです.イタリアの研究は,この論文のように数学的な本性をしっかりと考慮しているものが多く面白いです.数学が中心にあることがよくわかります.

追記:先々週あたりに数学教育学の研究における「規範性」についての議論があったのですが,それについてあとから思ったこと.近年のヨーロッパおよび米国の研究は,規範性を考慮しないものが非常に多い気がします.今回の論文ももちろんそうです.そんな中において,フランスの数学教授学やイタリアの研究の特徴は,特に米国の多くの研究と比較して,数学知識の分析を研究の中心に置いているところだと思います.

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