フランスに「小数」は存在しない!?

小数とは何でしょう?0.1 や 0.1234 のように 0 より小さい実数のことでしょうか?それとも,位取り記数法と小数点を用いて実数を表現するための表記法のことでしょうか?それとも,その表記法で表現される実数のことでしょうか?日本のものを色々見てみると,小数は数自体ではなく,表記法を指しているようです.そしてすべての実数が小数で表現できると考えるようです(e.g., 1 = 0.99..., 12 = 12.000..., pi = 3.1415...).これらのことからすれば,よく「小数1.23を10倍した数は12.3である」などと言いますが,省略せずより正確に書くと「1.23と小数で表記されるある実数を10倍した数は12.3と表記できる実数である」となるのでしょう.

この日本の「小数」という言葉,実は非常に興味深く,国によって異なるようです.少なくともフランスはちょっと違います.数学が国際言語というのは嘘かもしれませんね(笑).

「小数」の英訳は Decimal number とか単に Decimal だと思います.仏語でも同様に Nombre decimal と言ったり,単に Decimal と言ったりします.しかし,フランスの小学校の教科書などを見ていると,どうも上であげた日本語での「小数」と意味が異なります.実は定義が違います. nombre decimal の定義は,仏語の Wikipedia によれば,「有限の十進展開を可能とし,a x 10^p (a とp は整数)の形で表記できる数」とあります.確かフランスの教科書でも似たような定義だったと思います.ここで興味深いのは,nombre decimal が表記法ではなく,「数」として定義されているところです(ちなみに仏語で小数表記はexpression decimale などと呼ばれる),日本の表記法としての「小数」とは違うものなのです.

例えば,12 や 12.34 などは nombre decimal です.日本語で 12 を小数と呼ぶには抵抗があるでしょう.でも,フランスでは nombre decimal のひとつです.さらに,0.3333... と無限小数として表記できる有理数(1/3 とも表現できる)ですが,日本では「小数」と呼ぶかもしれませんが,フランスでは nombre decimal ではありません.上の定義でも,フランスの教科書でも記述されていることですが,nombre decimal には有限の十進展開しか認めないのです.つまり有理数は nombre decimal とは限りません.そして,もちろん無理数も nombre decimal ではない.nombre decimal とは,有理数の部分集合なのです.この nombre decimal の集合は,自然数の集合がN,整数の集合がZと書かれるのと同様に,D と書かれ.数の包含関係で表現すれば,N < Z < D < Q < R < C (ここで < は包含関係の含むを意味するとする)となります.

ちょっとした違いかもしれませんが,このように違うと nombre decimal を「小数」と呼ぶのには,抵抗がありますよね.おそらく,直訳で「十進数」と呼んだ方が良いのだと思います.日本で十進数が上の定義に合致するか知りませんが,小数よりは近い感じがします.しかし,するとフランスには「小数」という言葉が存在しないことになります.面白くないですか?しかし D のみを定義域として何かしたり,その性質を探ることってどのくらいあるのでしょうね?例えば,コンピュータは D しか使えないので,そっち方面などで利用されるのですかね?

ちなみに,英語圏での扱いは日本と似ている感じです.ネットで簡単に調べてみたのですが,Decimal number の信頼性のある定義を得ることはできませんでした.Decimal を小数点を利用する表記法として捉えていたり,十進数のことであったり,曖昧で,0.333... が Decimal Number であるかどうかはわかりませんでした.少なくとも,その集合を D と書くことはないようです.

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