Barbe, J., et al. (2005)

Barbe, J., Bosch, M., Espinoza, L., & Gascon, J. (2005). Didactic Restrictions on the Teacher's Practice: The Case of Limits of Functions in Spanish High Schools. Educational Studies in Mathematics, Vol.59 No.1-3, 235-268.

シュバラールの「教授学の人類学的理論」を用いて教師の実践における制約を分析したものです.ここで制約とは,数学知識を教えようとする際の,知識そのものによる制約です.事例としては,関数の極限を扱っています.論文は,具体例も多く非常に読み易いです.思うに,このスペインの研究グループは,いつも非常にわかりやすく説明してくれます.Bosch の講義を何度か聴いたことがありますが,そのときもそう思いました.この論文で,シュバラールの最近の理論をより深く理解できるかと思います.

論文の内容は,これまでの研究結果をまとめたものという感じで,盛りだくさんです.Praxeology を使って,関数の極限の学習に関わる基本となる数学的な枠組み (reference mathematical organisation) をうまく記述しています.教師の実践を単に実践そのものから分析しているのではなく,数学知識の視点から分析しているのです.この数学知識を特徴付ける,理解することをしっかりおさえているところが,アメリカの研究にはほとんどなく,フランス数学教授学の特徴であり,非常に重要なところです.このような枠組みなしに実践を分析すれば,経験主義的な描写しかできず,教師の行動や選択などに知識の側面から十分な意味を与えることができません.たとえ何かしらの意味を与えられたとしても,数学知識に関係ないものであったり,主観的なイデオロギーによって教育実践やさらには教師個人の良し悪しなどの議論程度になりかねません.

関数の極限に関しては,スペインの高校数学のカリキュラムでは,知識部分が空な「極限の代数」の praxeology と実践部分が空の「極限のトポロジー」の praxeology が分離して扱われており,いくら教師が努力しても,極限計算の手続き的なもの(実践部分)に十分な意味を与えることができないことを示しています.また最終章では, "hierarchy of levels of co-determination" の視点から,テーマ的な制限 (thematic confinement) が実践への制約を生んでいることも示しています.そう言えば,個人的なことですが,"hierarchy of levels of co-determination" は,2001年のサマースクールでシュバラールによる講義を聞きましたが,そのときはあまりよく理解できませんでした.この論文で大分理解できました.感謝.

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