Boero & Szendrei (1998)

Boero P. & Szendrei R. (1998). Research and results in mathematics education: some contradictory aspects. In A. Sierpinska & J. Kilpatrick (Eds.) Mathematics Education as a Research Domain: A Search for Identity (pp. 197-212). Dordrecht: Kluwer Academic Publishers.

ICMI Study の一環としてまとめられた書籍の一論文です.イタリアの大御所の先生とハンガリー人の共著となっています,この論文では,数学教育の研究の立場が,他国においても日本と似たり寄ったりなのがわかります(10年前の話ですが).そして,数学教育が一つの学問領域となり,かつ数学教育の実践に貢献するために,どのようなことが必要なのか「私見」が述べられています.著者は「私見」と言っていますが,その内容は数学教育研究一般に対して言うことができ,多くの国において必要なことだと思いました.

話を進めるにあたって,数学教育研究を以下の四種類に分けています.

- innovative patterns
- quantitative information
- qualitative information
- theoretical perspectives

簡単に説明しますと,Innovative patterns は,実践研究です.新たな指導法を考え,実践し,うまくいった!のように教師を対象とする実践雑誌に出ているようなものが想定されています.quantitative information は,学力調査のような量的・統計的な研究を指しています.qualitative information は,より詳細な質的な分析による研究を指します.そして最後の theoretical perspectives は,教授や学習の現象を説明するための理論やモデルを構築するといった研究です.最初の二つには pragmatic な数学教育を良くするといった直接的な目的で進められることが多く,あとの三つはより基礎的な科学的目的からなされることが多いとのことです.

この枠組みからみると,日本の多くの研究は,最初の二つ半ぐらいの研究が多いように思えます.三つ目の範疇に少し入るものでも,どうも「~を大事にしたい」「をすべきだ」などのイデオロギー的なものが多く,学問的になりきれていない感じがします.

話がずれましたが,本論文では,数学教育を一つの特定の研究分野にするために,学問的研究の範疇に入り得ていない innovative patterns の研究結果と,教師や数学者に対して数学教育研究を説得するために十分でない theoretical perspectives による研究結果の両方が必要であろうと述べています.実際, innovative patterns の研究結果として「~式指導法」「~式学習法」など様々な方法が発明されますが,それらがよいとする理由は曖昧です.一方,theoretical perspectives の研究は現象等のメカニズムを説明する理論構築を進めていますが,それだけでは無用の長物です.それがうまく説明できるものであることを示さなければなりません.つまり,前者を後者で説明,説得できれば,数学教育研究が一学問分野としての位置づけがはっきりしてくるという訳です.その際,難しいのは,専門用語をあまり用いずにいかに教師や数学者の言葉で説明するかと著者は言っていますが,その通りでしょう.努力が必要です.

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